大安寺(奈良市)は、日本で初めて天皇が創建された由緒あるお寺です。空海や最澄、行基がここで学び、空海は大安寺の別当として人々を導き、「大安寺を本寺とすべし」と書き残したほど。往時には、甲子園球場の6.6倍の大伽藍を誇っていましたが、今は25分の1の敷地に僧侶が5人。しかし、がん封じの寺として信仰され、全国から参拝者が絶えないほどの人気のお寺なのです。
著者、河野裕韶(こうのゆうしょう)は、大安寺の副住職で大阪市出身の元銀行員。同僚として出会った女性が、仏教の源泉とも呼ぶべき大安寺の一人娘でした。25歳で銀行を退職。仏門に入ることと結婚して河野家に入ること、二つの大きな決断をします。一般家庭に育ち、普通に大学を出てサラリーマンを経験した若き僧侶だからこそ見えた、仏教の奥深さ、お坊さんの日常を、のびやかな文章で綴ったエッセイです。
著者について
河野裕韶(大安寺・副住職)
昭和63(1988)年大阪市に生まれる。
サラリーマン家庭に育ち、大阪府立豊中高校、関西大学経済学部を卒業し、株式会社南都銀行に入行。生駒支店にて3年半勤務後、平成25年退職。
同年、高野山櫻池院にて得度。平成26年に高野山専修学院にて受戒、四度加行成満、伝法灌頂入檀。平成27年大安寺入山、平成29年より大安寺副住職。
往時の大伽藍をCGで再現、奈良国立博物館での大安寺展、神仏酒合(しんぶつしゅごう)プロジェクト等、さまざまな活動を展開。