【界 日光】男体山と中禅寺湖、四季折々の美しさと温泉に癒やされる宿(後編)

今回の旅は、観光地を急いでめぐるより、欲張らず「また来ればいいや」という気持ちで心身をリラックスさせるのが一番の目的です。星野リゾートの温泉旅館「界 日光」での1泊2日の滞在は、温泉・食・体験・買い物と盛りだくさんながら、ゆったりとそれぞれを楽しみました。前回に続いて今回は、食やご当地楽などの体験を紹介します。

 栃木の食と酒を味わう贅沢な時間

「界 日光」の食事処は、半個室のテーブル席で、それぞれのスペースがゆったりととられています。私は一人旅でしたが、担当スタッフが丁寧に説明、応対してくれたので安心して過ごすことができました。

天井を見上げると美しい絵。四季ごとに咲く日光の花々が描かれているのを見ると、食事を待つあいだも優雅な気持ちになれます。

旅の楽しみの一つはその地の地酒。季節の地酒の飲み比べは、栃木の銘酒、大那(大田原市)、姿(栃木市)、仙禽(さくら市)の3種類です。大那のふくよかな旨み、姿のすっきりとした味、仙禽のしっかりと感じる酸、料理に合わせて、それぞれの味の違いを楽しみました。

ディナーの特別会席「ウニと和牛の東照湯波会席」からピックアップして料理を紹介しましょう。
日光彫で高山植物のニッコウキスゲが描かれたお椀を開けると、先付けの雲丹・湯波ムースに献上醤油のコンソメゼリー。京都では湯葉と書きますが、日光では湯波という字を使います。これは、豆乳から汲み上げる時に、京都では端から引き上げて1枚にするのに対し、日光では真ん中から引き上げて二重にするため、波のようなシワができることからだそう。

宝楽盛(八寸)は、日光東照宮の眠り猫と三猿が描かれた益子焼。造り取り合わせは、鯛・鰤・生湯波が丸い3段の器に入っています。

宝楽盛の蓋を開けると、白和え、幽庵焼、紅葉和えなど、見た目にも華やかな料理が登場します。

揚げ物は、鶏とフォアグラの東寺茶巾。日光湯波を茶巾にしてパリッと香ばしく揚げたものを野菜の天ぷらとともに。山岳信仰の地だったために、全国から修行に来る僧侶の貴重なたんぱく源として、湯波が用いられてきたそうです。

台の物は、湯波と和牛の豆乳ミルフィーユ鍋。タモギダケ、トキイロヒラタケなど、きのこからもいいダシが出るので、湯波と牛肉をしゃぶしゃぶしていただきます。

鯛の土鍋炊きは、カツオ、サバ、イワシ、昆布、椎茸の合わせダシで炊いてあり、ふっくらとしたご飯が味わい深くて、シメにぴったりです。

イチゴと軽いチーズのムースは、柚子の風味がさわやかなデザートです。

翌日の朝食も栃木の食材がふんだんに使われていました。汁物代わりの鍋は、ダシのきいた鱒と湯波のべっこう鍋。味わい深いつみれに、ねっとりとした山芋とろろも美味です。栃木の特産品のかんぴょうは胡麻和え、白ごはんに添えられた自家製昆布梅もおいしくて、ショップでお土産に買って帰りました。

ご当地楽は能舞台で日光下駄のタップダンスショー

「界 日光」で印象的なのは、立派な能舞台です。この舞台で毎夜披露されるのが「日光下駄談義」。「日光下駄」は日光東照宮参拝のために作られたもので、江戸時代、社寺の境内に入る際、地位の高い人以外は草履を履くことが決まっていました。でも、日光の社寺は坂道が多くて雪も積もることから草履では歩きづらく、草履の下に木の下駄を合わせたものが考案されたのです。

一般的な下駄と違うのは、雪が付きにくいのと安定感があって歩きやすいこと。こういった説明を聞いたあと、日光下駄を履いたスタッフによるタップダンスを交えたステージです。観客も一緒に日光下駄を履いて、自席でタップを踏むというアトラクションも。

組子細工を体験

館内のあちらこちらにあしらわれた鹿沼組子は、見るほどに虜になっていくほど美しいのです。組子ライブラリーで随時体験できるのが、組子細工作りです。

好きな形の組子とパーツを選んで作るキーホルダーは、5分ほどでできる手軽さとそうは見えないかわいらしさで旅の思い出が倍増です。

岩絵の具を使った日光彩色体験

手業のひととき「社寺の修復に携わる伝統工芸士と日光彩色体験」は要予約の特別なプラン。日光東照宮をはじめとする歴史的建造物を修復する伝統工芸士、伊原実穂さんに直接教わる絵付け体験です。

伊原さんは、日光市出身の栃木県指定伝統工芸士で、10代から文化財修復の技術を学び、18歳で県指定文化財を手がけ、数多くの文化財修復に携わっている人です。気さくにわかりやすく文化財のことや修復の話をしてもらえるので、旅の記憶がより豊かになります。

下絵が書かれた縦10cm×横15cmの長方形の木版に、社寺に用いられるのと同じ9つの色を塗っていきます。絵が苦手でも、指導通りに色を付けていくと綺麗に仕上がります。

日光東照宮の眠り猫を描いたプレートが、2時間ほどで完成。このあと、伊原氏の案内による日光東照宮参拝ツアーもあります。とっておきの話が聞けるこのツアーもぜひ。

前編を読む

※体験プログラムの内容、日程、価格等は公式サイトでご確認ください。

界 日光
住所:栃木県日光市中宮祠2482-1
時間:チェックイン 15:00、チェックアウト 12:00
予約電話番号:050-3134-8092(界予約センター)
界 日光

Text:松田きこ

 

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