映画『湯道』、星野リゾートの「界」による『うるはし現代湯治』の魅力

長い1日を終えたあと、お風呂で湯船につかるひと時は、心身ともにリラックスする貴重な時間です。それが銭湯だと手足を伸ばせて、さらにゆったりと気持ちがほぐれます。温泉だったら、湯のにおいや成分によってさらなる効能があるでしょう。お風呂による深い心地よさは、なんともいえません。2023年2月23日公開の映画『湯道』は、まさにその心地よさを思い起こさせるお風呂エンタメ。この映画と「界」のコラボレーションを紹介しましょう。

映画『湯道』のストーリー

映画、『湯道』の企画・脚本は、『おくりびと』の脚本を手掛け、『くまモン』の生みの親でもある小山薫堂。演出は『本能寺ホテル』『マスカレード』シリーズを手がけた鈴木雅之。キャストは生田斗真、濱田岳、橋本環奈をはじめとするそうそうたるメンバーです。

物語の舞台は、地方都市にある昔ながらの銭湯「まるきん温泉」。壁には富士山の絵、冷水と温水が別々に出る蛇口、湯船の温度は熱い、昭和40年代ごろまで日本各地にあったような銭湯です。ここで生まれ育った三浦史朗(生田斗真)は、都会で建築家として独立したものの仕事はうまくいかず、家業の銭湯を継いだ弟の悟朗(濱田岳)とは、ほぼ交流がない状態でした。ある日、父の葬儀にも帰ってこなかった史朗が戻ってきます。訝しがる悟朗に史朗は、銭湯を廃業してマンションを建てることを提案。しかし、従業員のいづみ(橋本環奈)や、『湯道』に魅せられ、極めようとする定年間近の郵便局員(小日向文世)ら銭湯を愛する個性的な常連客たちと関わるうちに、史朗の気持ちは揺れ動いていきます。幾組もの家族にまつわるドラマにほろりとさせられたり、思わず吹き出したりしながら、入浴を文化と捉える『湯道』と交錯しながら物語が展開していきます。観たあとは、湯船につかったあとのようにほっこりした気分になり、すぐにでもお風呂に入りたくなります。

精神と所作で完成する『湯道』とは

『湯道』は、入浴に向き合う精神と様式は日本人にとって文化であり、華道、茶道、書道などと同じひとつの道(文化)と捉える考え方で、小山薫堂氏が2015年から提唱しているものです。精神面では大徳寺真珠庵(京都市)の第27世住職の山田宗正氏から「湯道温心」という言葉を賜り、湯に向かう三つの姿勢を基盤にします。所作の面では、合掌(自然の恵みに感謝)、潤し水(入浴前の水分補給)から湯上りの合掌まで11の項目があり、それぞれがゆったりと美しく、まさに「道」と言うにふさわしいのです。

とはいえ、堅苦しく考えることはなく、小山氏は数年前にこのように記しています。
・・・湯道を世に問い始めてから2年が過ぎた。まずは作法らしきものを作ってみたものの、「湯道は作法にあらず、湯に向かう姿勢なり」という結論を得た。形ではなく心。湯に浸かり何を思い、何を得るかが、大切なのだ。形はいずれ自然と生まれてくるに違いない。

「界」の『うるはし現代湯治』と『湯道』

「界」では、現代人のライフスタイルに合わせた湯治体験を『うるはし現代湯治』と名付け、全施設でその場所の泉質や効能に基づいて、温泉入浴の効果を感じられるプログラムをおもてなしの一環として提供しています。星野リゾートがこの取り組みを始めたのが2017 年、小山氏が『湯道』を提唱しはじめた時期と前後しています。お湯、そして入浴に向かい合い、「日本の入浴文化を大切にしたい」という二者の価値観が近いことから、映画『湯道』×『界』のコラボレーションに至りました。

「界」の『うるはし現代湯治』を加賀で体験

伝統建築の美を伝える

湯道の世界観を体験できる「界」は全国で21カ所あります。その一つが、石川県の山代温泉にある「界 加賀」です。1624年創業で、北大路魯山人ら多くの文化人が愛した老舗旅館「白銀屋(しろがねや)」の歴史を受け継ぎました。

外観でひときわ目をひくのは紅殻格子(べんがらごうし)。紅殻(べにがら)という顔料を使うことからこう呼ばれるもので、金沢の町家に見られる建築様式です。フロントホールを含む伝統建築棟と庭の茶室は、国の登録有形文化財です。

玄関を入るとフロントホール。天井を見上げると、釘などを一切使わない枠の内(わくのうち)という伝統的な建築手法で、太い大黒柱と大きな丸太梁を組み合わせているのがわかります。北陸の豪雪地帯では、屋根の雪に押しつぶされないように、このように頑丈に組まれていたそうです。「界 加賀」では2015年の大改修の際に、一旦ばらしたものを組みなおしたそうです。

温泉露天風呂付き「加賀伝統工芸の間」

すべての客室は「加賀伝統工芸の間」と称して、ローベッドとソファを設置し、設えには加賀友禅などの伝統工芸をあしらい、落ち着いた雰囲気です。全48室のうち、18室が温泉露天風呂付きの客室です。

厳選されたアメニティは女性に評判がよく、特製の風呂敷は館内で利用したあと、持ち帰ることができます。

部屋にある温泉が楽しめる露天風呂。昼間は格子の窓から差し込む陽射しが湯に反射して美しいゆらぎを演出。夜は星空と夜景が楽しめます。熱すぎず入りやすい湯温で24時間好きな時間に利用できます。

九谷焼のうつわで香ばしいお茶をいただきます。お茶菓子は、加賀市の老舗和菓子店「音羽堂」の銘菓「加賀紫雲石」。その上品な甘さにほっとします。

現代湯治体験

映画に出てくる「湯道温心」の掛け軸。界の各施設にも同様の湯名言が設置されており、映画を追体験できます。

オリジナル「湯道具」セット。手ぬぐい、湯呑み、桶といった、映画に出てくる湯道具を特別に制作。また、生乳100%の湯上がり牛乳も、ぜひ飲みたい味です。作法が書いてある湯道アシストガイドのパネルを読んで、館内にある大浴場に向かいましょう。

そしてより深く湯道と界を知るために、無料で参加できる「温泉いろはmeets湯道」が開催され、湯守による温泉の解説、クイズ、入浴前後のストレッチなどを楽しめます。(期間限定)

界特製「お湯印帳」は、お湯の感想や旅の記録を書き込んで旅の思い出を残せるもの。「温泉いろはmeets湯道」に参加すると1室1冊もらえるほか、売店でも販売しています。(1冊300円)施設によって違う「お湯印」を集めてみませんか。

大浴場の壁には九谷焼のアートパネル、窓には金箔で描かれた絵画があり、伝統とモダンが融合した雰囲気です。山代温泉は約1300年前に行基が霊峰白山へ向かう途中で発見したとされる温泉で、美肌、関節痛、冷え性などに良いとされています。

露天風呂は和の庭園に面し、冬には樹木の枝を雪から守る「雪吊り」を見ることができます。

宿のすぐ前には、公衆浴場「古総湯(こそうゆ)」と「総湯(そうゆ)」があります。「古総湯」は、明治時代の総湯を復元したもので、ステンドグラスや九谷焼など、古き良き時代の加賀らしい雰囲気が楽しめます。また、洗い場がなく源泉かけ流しというのも当時のまま。界 加賀に宿泊すると無料で利用できるので、ちょっと熱めのお湯をさっと浴びてすっきりしましょう。

映画『湯道』を観てから、現代湯治を体験すると、より深く温泉を楽しめます。温泉は、入浴は、日本の文化だということを実感した1泊2日の現代湯治体験。次回は界 加賀でできる体験プログラムなどを紹介します。
(取材・文 松田きこ)

■界 加賀
石川県加賀市山代温泉18-47
界 加賀

映画 湯道

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