魯山人の思想を受け継ぐ料理を堪能

日本海に近い加賀の冬のグルメといえばなんといってもズワイ蟹。界 加賀では、山代温泉に長く滞在した北大路魯山人が唱えた「器は料理の着物」という名言にならい、「器と料理のマリアージュ」が楽しめます。特に地元、九谷焼の用い方に力を入れ、若手の作家に作陶を依頼し、料理を引き立てながらも存在感のある器を使っています。なかでも、「活蟹のしめ縄蒸し」は塩水に浸した縄を蟹に巻きつけて蒸し上げる、豪快かつ旨み満載の一品です。

活蟹づくしのタグ付き蟹会席「極み」を味わう

活蟹と寒鰤の刺身

萌窯(小松市)の器にのった見た目にも華やかな香箱蟹は醤油のジュレで、蟹身と鰤はだし醤油でいただきます。口の中ですぐにとろける生の蟹身、肉厚の鰤もそれに負けないやわらかさです。

焼き蟹 酢橘 、甲羅焼き

香ばしい香りの焼き蟹は、軽く炙った身にスダチをしぼって。濃厚な蟹味噌と交互に食べると日本酒がほしくなります。

そこでいただいたのは三種類の地酒。五凛(白山市)、獅子の里(加賀市)、加賀鳶(金沢市)を飲み比べます。ANAのファーストクラスにも採用された五凛は華やかな吟醸香で、さらっとした飲み口。獅子の里は、さわやかながら酸がきりっと立っています。加賀鳶は、旨みのあるきれのよい辛口です。

活蟹の絹糸揚げ レモン サラダ仕立て

フランスで天使の髪と呼ばれる糸状の麺、カダイフをまとった蟹足。パリパリとした食感のころもの中から旨みたっぷりの身が現れます。ピリッとくるワサビ菜とともに。

蟹と野菜のお浸し 金時草と蓮根

加賀野菜の金時草(きんじそう)は、茹でると紫色になって粘りが出るのが特徴。レンコン、蟹、菊花を重ねて九谷焼作家・弦巻玲子さんの器で登場です。

活蟹のしめ縄蒸し

太い縄に巻かれた活蟹の大きさにびっくり。蒸し器がなかった時代の料理法として江戸時代の文献を参考に料理長が考案した「しめ縄蒸し」です。たっぷりの塩水に浸した縄を巻くことで蟹が間接的に蒸されて、身の水分と旨みが凝縮されるためとっても味わい深くなるのです。

蒸し上がった蟹は、食べやすいほぐし身にして供されます。ふっくらジューシーな身のおいしさはたまりません。和モダンな器は寺社仏閣の参道に用いられる石畳をデザインした縁起の良い絵柄の九谷焼です。

活蟹すき鍋

続いて鍋物が登場。蟹のほぐし身の団子が口の中でほどけると、旨みがあふれ出てきます。おだしもカラダに染み入るようなやさしい味わいです。

活蟹雑炊

おなかがいっぱいだと言いつつ、〆の雑炊はするりと喉を通ります。蟹のだしをたっぷり含んだごはんのおいしいことといったら…。

甘味 金時のデザート

サツマイモのムースの上に生クリームとレモンシャーベットがのったデザートが、口の中をさっぱりとしてくれます。金継ぎがほどこされた器を見ると、大切に使い続けられていることがわかります。

滋味豊かな朝食

良い料理は翌朝おなかにもたれません。すっきり目覚めた朝の食事も野菜や魚など、郷土の味を生かしたものが並びます。ふっくら甘みのあるごはんも絶品です。

味噌汁代わりのいしる鍋は、テーブルの上で温めます。いしるは魚を内蔵ごと塩漬けにして、発酵・熟成させた魚醤で、魚介による旨味が溶けこんだ濃厚な味です。地元では旬の魚介と野菜で鍋にするのが冬の定番料理だそう。

料理ごとに蟹の調理法や味が違った贅沢な夕げ。料理に合わせ、料理を引き立て、料理に引き立てられる器。そのコラボレーションも楽しめました。
(取材・文 松田きこ)

■界 加賀
・住所  :石川県加賀市山代温泉18-47
・電話  :050-3134-8092 (界予約センター)
・客室数 :48室・チェックイン15時 チェックアウト12時
・料金  :1泊41,000円~(2名1室利用時1名あたり、サービス料込・税込、夕朝食付)
界 加賀

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