【界 奥飛騨】晩春の北アルプス、山岳温泉を堪能する宿(1日目)

星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」の24番目の施設「界 奥飛騨」が、2024年9月に開業しました。2000メートルを超える北アルプスの山々に囲まれた奥飛騨温泉郷と聞けば、非日常感抜群のはず!山岳温泉というのも気になって、今回の旅の行き先に決めました。

美しい山々に囲まれた静かな温泉地へ

奥飛騨までは、まず新大阪から名古屋駅まで新幹線「のぞみ」で行き、特急「ひだ」で高山駅下車。高山駅前の濃飛バスセンターから路線バスで平湯バスターミナルに向かいました。古い町並みが残る高山市内を抜けると、バスは山あいを走り、ほどなく山岳地帯に入ります。まだ雪が残る山々、背の高い木々など、車窓から見える景色は関西と大きく異なり新鮮そのもの。約50分のバス旅があっという間に感じられました。

平湯バスターミナルに到着。バスターミナルの中はパン屋、レストラン、土産物店があり、スキーシーズンが終わった時期とはいえ、旅行客で賑わっていました。

「界 奥飛騨」までは徒歩約3分。フロントや大浴場がある本館、宿泊棟が2棟、離れ棟の4つの建物が中庭や公道のまわりに建っています。シンプルで落ち着いた色合いの建物は周辺の風景に自然に馴染んでいます。

チェックインの手続きは離れ棟にあるトラベルライブラリーで。「界」のトラベルライブラリーは、それぞれご当地の文化や風習を取り入れてあるので、毎回とっても楽しみなんです。まず目を引いたのは壁にはめ込まれた美しい木。飛騨に多い広葉樹のブナ・ナラ・タモ・サクラの色目を生かしてデザインされています。

オブジェとしてディスプレイされているのは、使いこまれた工具たち。金槌、カンナ、ノミなど職人さんたちが大切にメンテナンスしていた、その思いが伝わってくるようです。

離れ棟の前は湯の川が流れ、足湯もあります。この足湯は常時利用可。目の前に見えるのは、活火山のアカンダナ山です。アカンダナ山の北にある焼岳やバスから見えた乗鞍岳も活火山なんだそう。活火山と雨や雪が多い地域ということもあって、豊富な湯量の温泉が湧き出ているようです。

露天風呂付きのご当地部屋へ

「界 奥飛騨」では、全49室のすべての客室がその地域の文化や風習を取り入れたご当地部屋「飛騨MOKUの間」です。そのうち28室が露天風呂付きという贅沢な宿。ベッドのヘッドボードは曲木をモチーフにブナ・ナラ・タモ・サクラの木をデザイン。椅子も曲木の技術が使われています。

客室のキーホルダーは木製で、丸い形が手のひらにすっと馴染みます。なんとなくぬくもりを感じるのは無垢の木だからかもしれません。

客室に飾られているウォールアートは、伝統的な漆塗りの飛騨春慶。木目の美しさを生かす透漆(すきうるし)塗りの色調が素敵です。クッションは飛騨染、やわらかな明かりを灯すスタンド照明は800年の歴史を持つ山中(さんちゅう)和紙です。

そして、楽しみにしていた部屋付きの露天風呂には、濡れたまま座ったり寝そべったりできるソファーが!ブラインドを開ければ、下部はすりガラス、上部はオープンになり、外の景色を眺めながら湯につかれます。

温度は熱すぎずちょうどよい湯加減。

客室には露天風呂のほかにシャワーブースもあり、オリジナルのアメニティ完備。「界」のオリジナル風呂敷もあります。この風呂敷がかわいくて使い勝手もいいので私のコレクションでもあります。

本館の大浴場もチェック!

大浴場は本館の2階にあります。1階にのれんが出ているので、すぐにわかります。

階段の踊り場にも、山中和紙の照明がありました。山中和紙は飛騨市の無形文化財に指定されており、現在では2軒のみが製造しているそうです。原材料はすべて地元産で、すべての工程が昔ながらの手作業で行われている貴重なものなのです。

内風呂は源泉かけ流しの「あつ湯」と「ぬる湯」の2つの浴槽があります。2カ所の源泉からお湯を引いており、その効能は多岐にわたります。筋肉痛や冷え性、お肌しっとり、湯冷めがしにくいというのに惹かれました。

露天風呂の壁と天井は雪の回廊をモチーフにした白色。天井がオープンになっているので、お湯につかりながら流れる雲を眺めたり、星空を眺めたりすることができます。ぼんやりと見上げていると時間を忘れてしまいそう。

湯上がり処では2種類のドリンクで水分補給して、曲木の椅子でくつろぐもよし、奥の小上がりで足を伸ばすもよし、休日ならではの時間が過ごせます。

現代湯治「温泉いろは」で知識を増やそう!

宿泊客なら誰でも参加できる「温泉いろは」ですが、「界 奥飛騨」では足湯につかりながら体験できるんです。足元からぽかぽか、その効能を実感しながら温泉の知識を得られます。

湯守りのスタッフさんが、クイズ形式で温泉のしくみや効能などをわかりやすく説明してくださいます。泉質はナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩・塩化物泉。炭酸水素塩泉の効果で角質や毛穴の汚れを落として肌がなめらかになり、塩分を多く含んでいるため、肌に塩の膜が張られて保湿効果と保温効果があるとか。

「温泉いろは」の後、希望者は湯守りさんの案内で近くを散策。すぐ目の前には、公共の足湯があります。

そして、つるや商店さんで、「温泉はんたい玉子」をいただきました。源泉でゆがかれた玉子は、白身はとろとろ黄身は半熟に仕上がります。パラパラを塩をふりかけて食べると、なんともおいしい!

郷土料理を進化させた会席を味わう

夕食は「飛騨牛の味噌すき会席」。先付けはいろりを模したうつわで登場。中央には山彦(やまひこ)人形があり、いろりの火をイメージした赤いうつわに料理が入っています。

山彦人形とは飛騨の文化人、代情(よせ)山彦氏によって、山霊の分霊として象られた開運、魔除けのお守りです。頭は北アルプスの山々の形、顔は大自然への畏怖の念を、4つの色は四季を表しています。紫は乗鞍岳、緑は槍ヶ岳、赤は笠ヶ岳、茶は焼岳の形です。
この先付けは、山彦人形は紫の乗鞍岳と緑の槍ヶ岳、うつわが赤と茶色で、飛騨の世界観を表す粋な演出がなされていました。

うつわのふたを開けると、郷土料理のすったてと牛時雨。すったてとは地元の言葉で、大豆をすりつぶしたもののこと。冷たい茶碗蒸しの上に季節の野菜を加えたすったて、さらに牛時雨がトッピングされ、紅芯大根おろしにスダチを絞っていただきます。

地酒の種類もたくさんありましたが、今回選んだのは蒲酒造場の「白真弓」。300年以上の歴史をもつ酒蔵で、すっきりとした味が食中酒にぴったりでした。利き酒セットもありましたが、この味一本で夕食をいただきました。

煮物椀は鮑の真薯。鮑を練り込んだ贅沢な真薯に、アオサとスダチの豊かな風味とともにいただきます。

宝楽盛・八寸は、お造りや和え物、揚げ物など、日本酒に合う肴がずらり。エビと青菜の松風は、たっぷりのダシを含んで、口の中で旨みがじゅわっとあふれます。丸十のおかき揚げは、さつまいもの甘みに砕いたおかき衣の醤油味がベストマッチ。

揚げ物はハモの薄衣揚げ梅肉添え。たたき海老の新挽き揚げは、ふっくら蒸した空豆とパプリカをくるんでいます。どちらも外側はカリッと、具はしっとりとした食感の違いも楽しめ、野菜の天麩羅にも塩レモンがよく合います。

台の物は飛騨牛味噌すき焼き。飛騨牛とゴボウ、キノコを甘めの味噌で煮るのが地元スタイル。

飛騨牛を粘りの強い山芋のとろろにくぐらせて食べると、するりと喉を通ります。薬味の岩のり、からし、わさびを順次付けてみました。具材の中でもダシが染みた、こも豆腐の豊かな味わいとしっかりした食感が印象に残りました。そばの実ごはんとたたき梅のお吸い物で大満足。

甘味のみたらし真珠麿(マシュマロ)は、あぶったマシュマロに甘じょっぱいみたらし餡がかかっています。

マシュマロを食べて網を外すと、黒ゴマアイスの上に落ちたみたらし餡、竹炭で色を付けたクランブルの食感とともに味わいます。

大満足の夕食のあとは、快適なベッドですぐに夢の中へ。

—2日目につづく—

【界 奥飛騨】晩春の北アルプス、山岳温泉を堪能する宿(2日目)

※体験プログラムの内容、日程、価格等は公式サイトでご確認ください。

界 奥飛騨
住所:岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯138
時間:チェックイン 15:00、チェックアウト 12:00
予約電話番号:050-3134-8092(9:30〜18:00)
界 奥飛騨

Text:松田きこ

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